2021年10月31日(日曜日)は衆議院議員選挙および最高裁判所裁判官国民審査の投票日です。民主主義を実現するためには主権者の投票が不可欠となります。10月31日(日曜日)は必ず投票所に行きましょう。

自民党憲法改正案の問題点:第52条2項|国会の会期が法律事項に

憲法尊重擁護義務(憲法第99条)を無視して、憲法の改正に執拗に固執し続ける自民党が公開している憲法改正草案の問題点を一条ずつチェックしていくこのシリーズ。

今回は、国会における常会の召集を規定した第52条に会期に関する規定を新設した自民党憲法改正案第52条2項の問題点を考えてみることにいたしましょう。

「会期」に関する規定を新設した自民党憲法改正草案第52条2項

今述べたように、現行憲法の第52条は国会における常会の召集に関する規定を置いていますが、自民党憲法改正案はその規定に第2項を新設し「会期」に関する条文を追加しています。

では、具体的にどのような規定が追加されたのか、現行憲法の第52条と比較してその条文を確認してみましょう。

日本国憲法第52条

国会の常会は、毎年一回これを召集する。

自民党憲法改正草案第52条

第1項 通常国会は、毎年一回召集される。
第2項 通常国会の会期は、法律で定める。

※出典:自由民主党日本国憲法改正草案(平成24年4月27日決定)|自由民主党 を基に作成

このように、自民党改正案は第1項で「常会」を「通常国会」と変えていますが、この点は現行憲法上の「常会」を「通常国会」に言い換えただけと思われますので特に問題はありません。

問題は第2項に「会期」に関する規定を新設し、その会期を「法律で定める」と法律事項にしている点です。

では、自民党憲法改正草案の第52条が第2項にこうした「会期」の規定を新設し、その会期を法律事項としている点は具体的にどのような問題を生じさせるのでしょうか。検討してみましょう。

「会期」が「法律事項」とされてしまうと多数議席を確保した自民党が思いのままに会期を伸長できるようになる

この点、結論から言えば、こうして憲法に「会期」を「法律で定める」と条文として追加することは問題があると言えます。

なぜなら、このように「会期」を「法律で定める」と規定して会期を憲法上の法律事項としてしまうと、多数議席を確保した自民党が思いのままに会期を操作することが「憲法上の要請」として認められるようになってしまうからです。

(1)現行法上も会期は国会法で定められているので「法律事項」になっているが、それは憲法上の要請ではない

もちろん、現行憲法では会期に関する規定はなく、会期は国会法という法律に規定されていますから、その点を考えれば現行憲法上でも会期は「法律事項」と言えます。

国会法第10条

常会の会期は、百五十日間とする。但し、会期中に議員の任期が満限に達する場合には、その満限の日をもつて、会期は終了するものとする。

国会法第11条

臨時会及び特別会の会期は、両議院一致の議決で、これを定める。

しかし、それは「憲法からの要請」として法律事項になっているわけではなく、憲法に規定がないので法律で規定しているだけにすぎません。

現行憲法上での国会の会期はあくまでも国会法という法律で定められた「法律上の原則」であって「憲法上の原則」ではないので、国会法を改正すれば会期の制度を改めることはできますし、国会法から会期を取り除いて法律によらずに国会を組織する議員が独自に会期を決定することも、それ自体は可能なのです。

(2)憲法に「会期」を「法律事項」とする条文を置いてしまうと、その法律事項が「憲法からの要請」となってしまう

しかし、自民党憲法改正草案第52条2項のように「会期」を「法律で定める」という条文を憲法に明記してしまうと、その「会期を法律で定めること」が「憲法上の要請」となってしまいますから、法律で定められた会期が「憲法上の要請」として絶対的な原則となってしまいます。

つまり、憲法に「会期」を「法律で定める」と規定してしまうと、その憲法規定が「会期は法律で定められる限りどのような会期でも有効だ」という理屈の根拠となってしまうので、多数議席を確保した政党が国会で立法することで会期を思いのままに決定することが、憲法で許されることになってしまうのです。

(3)多数議席を確保した自民党が思いのままに会期を伸長することが憲法で許されることになる

たとえば国会法で常会の会期を極端に短く定める法律を制定したとしましょう。

先ほど挙げたように現行法の国会法は第10条で常会の会期を150日と規定していますが、会期の長さを極端に短縮するような国会法の改正は、その短い会期で法律を制定せねばならないことを考えれば十分な議論の時間が確保できなくなってしまうので、違憲性の問題が生じるものと思われます。

憲法第52条が「毎年一回これを召集する」と規定することで国会の開催を要請した趣旨からすれば、極端に短い会期で国会の運営を事実上不能にしてしまう国会法の改正は、憲法が本来的に予定していないと考えられるので、極端に短い会期を設定すること自体が違憲性を帯びてしまうからです。

つまり、現行憲法では「会期」に関する規定は憲法に存在しないので、会期を法律で定める際にも他の憲法規定の趣旨と整合させなければならず、多数議席を確保した政党といえども会期を好き勝手に決定することには限界があるわけです。

しかし、自民党憲法改正草案第52条2項のように、憲法に「会期」を「法律で定める」という規定を置いてしまうと、その「会期を法律で定めること」が「憲法上の要請」となってしまいますから、法律で定めておきさえすればその会期がいかようなものであろうとも、憲法第52条2項が定めた「会期を法律で定めること」の要請に従ったものとして合憲性の理屈を担保できるようになってしまいます。

多数議席を確保した政党が会期を好き勝手に決めたとしても、それが法律で定められてある限り憲法の要請に従ったものとして違憲性を排除することができるようになるわけです。

そうなると、多数議席を確保した自民党は、野党から反対される法案を通したいと考える場合には事前に法律(国会法)を改正して会期を極端に短くしておきさえすれば審議時間を短くすることで野党からの追及を抑え込み国民の批判をかわすこともできるようになりますし、逆に多くの法案を通したい事情がある場合には事前に法律(国会法)を改正して会期を極端に長くしておくことで議員立法を乱発することもできるようになってしまうかもしれません。

しかしそれでは、もはや国会はまともな議論も期待できなくなってしまいますから、多数議席を確保した政党(自民党)によって都合よく利用されるだけの場になってしまうでしょう。

自民党憲法改正草案第52条2項は法律で定めておけば会期を好き勝手に操作できるとする解釈を導く点で問題がある

以上で説明したように、自民党憲法改正草案第52条2項は通常国会の「会期」を「法律で定める」と規定していますが、こうした規定を憲法に置いてしまうと、それが「憲法上の要請」となり、その要請にしたがって法律に定められた「会期」が「憲法上の要請」に従って法制度化された「憲法上の原則」となる解釈も導くことができるようになるため、結果的にその憲法規定を根拠に「会期は憲法によって法律事項であると明記されているから、極端に短い会期であっても法律で定めれば違憲ではない」との理屈も成立してしまうことになりかねません。

仮に改正後の自民党がそうした解釈をとるとすれば、多数議席を確保した自民党が国会の会期を自由に操作することが「憲法」によって認められることになりますから、国民はもはや自民党が好き勝手に操作する会期の短縮・延長を「憲法違反だ」と批判することはできなくなってしまうでしょう。

しかしそれは、自民党にとって不都合な法案については会期を短縮することで野党の批判を封じ込め、国民を抑圧する法案を乱発したいときには会期を伸長して強行採決で数の力で押し切って悪法を乱立させることも可能にしてしまいますから、国民にとっては害悪でしかありません。

自民党憲法改正草案第52条2項は「会期」を「法律で定める」と規定していますが、その憲法規定を根拠に「会期は法律事項であると憲法に明記されているから、法律で定めておけばどんな会期であっても違憲ではない」という理屈が成り立ってしまう点で大きな危険を生じさせます。

そうした危険な条項をあえて憲法に新設しなければならない理由がどこにあるのか、国民は冷静に考える必要があるでしょう。