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ゼレンスキー大統領の国会演説が憲法違反につながる理由

ロシアから軍事侵攻を受けているウクライナのゼレンスキー大統領が打診している国会での演説を認めるべきだとの論調が日増しに高まっています。

これについて立憲民主党の泉健太党首は3月16日に消極的な見解を示していたものの、ネット上で批判の声が上がるとたちまち軌道修正し、翌17日には前言を翻して「実施の方向で調整を進めています」と前向きな姿勢を打ち出しました。

他方、政府もこれには前向きなようで、岸田首相も17日の国会において、ゼレンスキー大統領から打診を受けている国会演説について「国会でしっかり議論し、前向きに対応してほしい」と述べたそうですから、立憲民主党だけでなく自民党も含めた与野党の大部分が、実施の方向で動き出していることが推測されます。

大統領演説「前向き対応を」 ウクライナ打診で岸田首相―北方領土は不法占拠

https://www.jiji.com/jc/article?k=2022031700500&g=pol

岸田総理 ゼレンスキー大統領の国会演説「前向きに対応」

https://news.tv-asahi.co.jp/news_politics/articles/000248354.html

しかしながら、こうしてゼレンスキー大統領の国会での演説を認めることは、国会議員の憲法尊重擁護義務違反に繋がるだけでなく、日本を戦争に巻き込む大変危険な選択だと思います。

以下、その理由を簡単に述べていきます。

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【1】ゼレンスキー大統領の国会演説を認めることは国会議員の憲法尊重擁護義務違反に繋がる

この点、まず考えてもらいたいのが、ゼレンスキー大統領の国会演説を認めることが国会議員の憲法尊重擁護義務違反に繋がる危険性です。

なぜ、ゼレンスキー大統領の国会演説を認めることが国会議員の憲法尊重擁護義務違反に繋がるのか、それは次の点で憲法違反の問題が生じるからです。

ア)ゼレンスキー大統領は「世界のために戦っている」と述べている

ゼレンスキー大統領は英国議会でオンライン演説を行ったのに続いて、カナダや米国、ドイツの議会でも演説を行ったようですが、16日に米国の連邦議会で行ったオンライン演説では次のように語ったとの報道がなされています。

演説の後半は英語で語った。「我々はウクライナのためだけではなく、欧州の価値観、世界の未来のために闘っている。米国、そして米国の指導者であるバイデン大統領には平和の指導者になってほしい」と呼びかけた。

https://mainichi.jp/articles/20220316/k00/00m/030/385000c

なお、この部分はゼレンスキー大統領がウクライナ語ではなく英語でスピーチした部分ですが、念のためワシントンポストのウェブサイトに掲載されているスピーチ全文から該当部分を引用しておきます。

Today, the Ukrainian people are defending not only Ukraine; we are fighting for the values of Europe and the world, sacrificing our lives in the name of the future.

https://www.washingtonpost.com/politics/2022/03/16/text-zelensky-address-congress/

この部分をDeepLで自動翻訳した結果は次のとおりです。

今日、ウクライナの人々は、ウクライナだけでなく、ヨーロッパと世界の価値のために、未来のために命を犠牲にして戦っているのです。

https://www.deepl.com/translator で自動翻訳

ちなみに、この演説はCNNのYouTubeチャンネルで公開されています(年齢制限があるのでYouTubeでしか視聴できないようですが念のため埋め込んでおきます)。

ゼレンスキー大統領のこの発言からは、現在のウクライナで戦われている戦争がウクライナを守るための自衛戦争というだけでなく、「世界の未来のため」の戦争でもあると認識していることをゼレンスキー大統領が認めたことが分かります。

ゼレンスキー大統領は、現在のウクライナで起きている戦争について「ウクライナは主観的には『世界の未来のため』の代理戦争として戦っているのだ(だから支援してくれ)」と述べているからです。

しかしそうなると、そのゼレンスキー大統領が言う「世界」には、その「世界」の一員である日本も当然に含まれますから、このゼレンスキー大統領の発言は、ウクライナの現在の戦争がウクライナの主観的には「日本の未来のため」の戦争でもあると述べたことになります。

つまり、このゼレンスキー大統領の発言からは、ウクライナという国家が主観的には「日本の未来のため」に日本の代わりに代理してロシアとの戦争を戦っているとの認識を持っているということがわかるわけです。

イ)ゼレンスキー大統領の演説を国会で認めれば「日本の未来のために戦う代理戦争」を総議員が総立ちで拍手を送って認めざるを得なくなる

このように、ゼレンスキー大統領は現在のウクライナにおける戦争を「世界の未来のために戦っている」という趣旨で説明していますから、その「世界」に日本も含まれる以上、ウクライナが主観的にはその戦争を「日本のための代理戦争」との認識も持ったうえで戦っているということになります。

では、そうした認識で戦争を遂行しているウクライナのゼレンスキー大統領の演説を国会で認めることになった場合、どのような問題が生じるでしょうか。

この点、仮に英国やカナダや米国議会のように日本の国会でゼレンスキー大統領のオンライン演説を行えば、ロシアの侵攻が明らかな国際法に違反する侵略行為である以上、国会は総議員が総立ちで拍手を送らなければならなくなります。

英国議会がゼレンスキー大統領の演説に総立ちで拍手を送った映像は記憶に新しいですが、仮に日本の国会議員が総立ちで拍手を送らなければ、ロシアの侵略を容認するかのような印象を与えてしまうため、拍手を送らざるを得なくなるからです。

【議員が総立ちで拍手を送った英国議会】

【議員が総立ちで拍手を送った米国議会】

しかし、国会議員が総立ちでゼレンスキー大統領の演説に拍手を送れば、それはウクライナが日本の代わりに代理戦争を戦っているという事実を日本の立法府である国会が「認めた」ということになります。

先ほど説明したように、ゼレンスキー大統領は「世界の未来のために戦っている」と述べているので、その「世界」に日本が含まれる以上、ウクライナは主観的には「日本の未来のための代理戦争」としてロシアと戦っていることになりますが、その戦いを主導するウクライナのゼレンスキー大統領に総立ちで拍手を送れば、それは日本の立法府を組織する国会議員が客観的にもウクライナのその代理戦争を承認したことになるからです。

つまり、仮にゼレンスキー大統領の演説を国会で流せば、ロシアの侵略である以上、総議員が総立ちで拍手を送らなければならなくなる結果として、事実上、日本の立法府である国会が、総立ちでウクライナが「日本の未来のため」に戦う戦争を「代理戦争として」認めなければならなくなるわけです。

ウ)「日本のために戦う代理戦争」を他国の国民に行わせることは憲法の平和主義の基本原理と9条に違反するのですべての国会議員が憲法尊重擁護義務に違反することになる

ですが、日本は憲法前文で「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し…」と述べることで戦争との決別を宣言して平和主義の基本原理に立脚することを述べたうえで、憲法9条でも戦争を放棄して自衛のためも含めたすべての軍事力の保持と行使を禁止しています。

日本国憲法前文

 日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたつて自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基くものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。
 日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。
 われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであつて、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。
 日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。

※出典:日本国憲法|e-gov を基に作成

日本国憲法第9条

第1項 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
第2項 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

※出典:日本国憲法|e-gov を基に作成

つまり日本は、憲法において、戦争も軍事力も放棄しているので、軍事力を用いた戦争はたとえ自衛のためであっても憲法で認めていないのです。

そうであれば、その軍事力を用いた戦争は、たとえ他国が行う代理戦争であっても認めるわけにはいきません。日本が憲法で自国の国家権力に軍事力を用いた戦争を禁止しているのに、他国(ウクライナ)に「代理させて」行う戦争であれば合憲として認められるなどというロジックは成り立たないからです。

ウクライナが単に「自衛のため」との主観的認識で戦う自衛戦争はウクライナの主権者の意思で行われるものなので、日本の国会議員が認めること自体は問題とはなりません。それはウクライナの主権者の選択なので、日本の憲法とは何の関係もないからです。

また、ウクライナがその自国のための自衛戦争を主観的には「日本の未来のための代理戦争」との認識で戦うこと自体も、それはウクライナの主権者の自由な意思決定に基づいて行われるものなので、日本の憲法とは何の関係もありませんから何も問題ありません。

しかし、その戦争が「日本の未来のための代理戦争」として行われることを日本の国会議員が国会で認めてしまえば、その戦争は日本の立法府の主観的認識のうえでも「代理戦争として」行われることになりますから、その戦争を「代理戦争として」行わせている主体が日本の国会議員となってしまいます。日本の立法府が「ウクライナに代理戦争をさせている」という構図になってしまうのです。

それにもかかわらず、ウクライナが主観的には「(日本も含めた)世界の未来のため」との認識で戦うその代理戦争を国会が総立ちで拍手を送ることになるわけですから、それは憲法の基本原理である平和主義と9条に違反して、日本の国会議員がその憲法が禁止した武力を用いた戦争を「ウクライナの国民を利用して代理戦争としてやらせること」を認めることになるので明らかな憲法違反です。

それは当然、国会議員に憲法を尊重し擁護することを義務付けた第99条に違反しますから、ゼレンスキー大統領の演説を国会で認めることになれば、結果的に全ての国会議員が憲法尊重擁護義務に違反するということにならざるを得なくなるのです。

日本国憲法第99条

天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。

※出典:日本国憲法|e-gov を基に作成

エ)国会の総議員が憲法尊重擁護義務に違反することになれば、立憲主義は崩壊する

以上で指摘したように、ゼレンスキー大統領の演説を国会で流すことになれば、そこにいる議員がその演説に総立ちで拍手を送らざるを得なくなる結果として、日本の国会全体がウクライナが主観的には「世界(日本)の未来のため」との認識で戦うロシアとの戦争を「代理戦争として」認めることになる以上、全ての国会議員が憲法の平和主義の基本原理と9条に違反することになり、憲法尊重擁護義務に違反するということにならざるを得なくなります。

それはもちろん、日本の立憲主義の終わりを意味します。

立憲主義は国の権力が憲法に拘束されることを意味しますが、その権力を行使する立法府が憲法に従わなくてもよいとする前例を国会の総議員が作るのですから、その時点で日本の立憲主義は死ぬでしょう。

もちろん、ロシアのウクライナ侵攻は明らかな国際法違反であって侵略であり許されるものではありません。

しかし日本国憲法は軍事力を用いた戦争を禁止しているのですから、たとえ「代理戦争」であってもそれを認めることは許されません。ウクライナは主観的には「日本の未来のための代理戦争」としてロシアとの戦争を戦っている(ゼレンスキー大統領はそう述べている)のですから、それを立法府である国会が「代理戦争として」認めることはできないのです。

ウクライナの国家が行う戦争を「代理戦争として」支援しなくても、ウクライナの国民を救う手段はいくらでもあります。

難民を受け入れたり、難民を受け入れる東欧諸国に支援するなどでもウクライナの国民を救うことはできるでしょう。

それは憲法前文が要請する「全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する」に沿うことになりますし、「自国のことのみに専念して他国を無視してはならない」の要請にこたえるものになるはずです。

もちろん、日本国憲法の平和主義と9条は、中立的な立場から国際社会に向けて平和構想の提示を行ったり、紛争解決のための助言や提言であったり、貧困解消のための援助など外交努力を積極的に行うことを要請していますから、ウクライナとロシアの停戦に向けた話し合いを積極的に支援することも必要でしょう。

そうして武力によらない平和実現の努力に尽力すればよいのです。それが憲法前文が述べた「われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ」を具現化することにつながるのではないでしょうか。

ゼレンスキー大統領の国会での演説を認めることは、憲法論的に大きな問題を生じさせます。日本政府や国会議員がそのことに気づき、冷静な判断をしてくれることを望みます。

【2】NATO加盟国に追随してゼレンスキー大統領の演説を国会で認めれば、日本は戦争の当事者になる

以上は憲法論から考えて国会議員の憲法違反に繋がるという話ですが、それとは別に、ゼレンスキー大統領の国会演説を認めることで、日本が当事者として戦争に巻き込まれる危険性も指摘しておきます。

ロシアによるウクライナへの侵攻の要因については見識が全くないので言及は避けますが、在ウクライナ日本大使館のウェブサイトによれば、ウクライナはNATOとの間で1994年の早い段階から協力関係を築いていただけでなく、2002年にはNATO加盟の意思を表明していたそうですから(※詳細は→ウクライナはロシアに侵攻されたから憲法9条は改正すべき…なのか)、今回のロシアの軍事侵攻は、NATO外交の失敗もその一因として挙げられると思います。

ゼレンスキー大統領は、17日にドイツ連邦議会で行ったオンライン演説でも「ウクライナのNATO加盟をはぐらかし」と批判したそうですから、これまでNATOが行ってきた外交の失敗が今の戦争に影響を与えているという点はゼレンスキー大統領も同意してくれるでしょう。

ゼレンスキー大統領は17日、ドイツ連邦議会(下院)でビデオ演説した。支援に謝意を示す一方、ドイツはロシアとの経済関係を深めて戦費を稼がせた上、ウクライナの北大西洋条約機構(NATO)加盟などの要望をはぐらかし、ウクライナと欧州の間に「新たな壁」をつくることに加担してきたと批判した

https://www.jiji.com/jc/article?k=2022031701257&g=int

この点、ロシアのウクライナ侵攻にNATO外交の失敗が少なからぬ影響を与えているのなら、その責任はNATO加盟国が負担しなければなりません。

NATOは軍事同盟ですから、ウクライナと1994年の早い段階から協力関係を築いてきたのなら「ウクライナを守る」という前提の下で外交を行ってきたはずで、それが実現できなかった以上、ロシアの侵攻からウクライナを守り、その侵攻を早急に停止させる外交上の責任がNATOにはあるからです。

BBCの報道によれば、3月9日までの時点でウクライナに武器を提供している国はNATO加盟国を中心に14か国にも上るそうですが、NATO加盟国が中心となって軍事的な支援をしているのも、その責任がNATOにあるとの認識があるからでしょう。

武器をウクライナに提供しているのはあわせて14カ国で、長らく中立を維持し、NATOに加盟していないスウェーデンやフィンランドも加わってる。

https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-60672040

議会の演説についても同じです。

3月18日の時点でゼレンスキー大統領のオンライン演説を行った国は、報道によればイギリス、カナダ、アメリカ、ドイツの4か国のようですが、これらは全てNATO加盟国です。

NATO加盟国としては、ロシアのウクライナ侵攻を止められなかった外交上の責任がありますから、ゼレンスキー大統領から議会での演説を求められれば断れません。断ってウクライナを突き放せば東欧のNATO加盟国は動揺してしまうでしょう。

議会でゼレンスキー大統領の演説に総立ちで拍手を送ることでロシアを非難し、NATOの正当性を自国の国民にアピールする狙いもあるかも知れません。もちろん、ロシアのウクライナ侵攻は明らかな国際法に違反する侵略なので非難されて当然ですが、そうした打算もあるではないでしょうか。

つまりゼレンスキー大統領の議会演説を行っている国は全てNATO加盟国であって、今起きている戦争の当事者なのです。

しかし日本は違います。日本はNATOに加盟していませんから、NATO外交の失敗に責任はありません。

もちろん、日本も世界の一員でありロシアとも外交があるのですから、今回のロシアによるウクライナ侵攻を止められなかった外交上の責任が全くなかったとは言えないでしょうが、NATO加盟国のように直接的な責任はないでしょう。

そうであれば、NATOとは違った立ち位置から、ロシアのウクライナ侵攻を止めさせるべく、中立的な立場を維持したうえで、平和構想の提示や紛争解決のための提言を積極的に行って和平の道を探るべきではないでしょうか。

先ほども述べましたが、ゼレンスキー大統領の演説を国会で認めることになれば、ロシアのウクライナ侵攻が明らかな国際法に違反する侵略行為である以上、国会議員が総立ちで拍手を送らなければならなくなってしまいます。

しかしそうなれば、ゼレンスキー大統領の議会演説を許したNATOに加盟するイギリスやカナダ、アメリカやドイツなどと同様に、戦争の当事者になったとのメッセージをロシアや国際社会に与えてしまうでしょう。それは日本国民を戦争の当事者にしてしまうということではないでしょうか。

日本の国会は「バスに乗り遅れるな」と言わんばかりにゼレンスキー大統領のオンライン演説に前向きですが、そのバスはNATOのバスであって、国際社会のバスではありません。

タイやインドネシアやマレーシアや、ベトナムやバングラディッシュやブータンや、パキスタンやインドやスリランカや、オマーンやイエメンやエジプトや、タンザニアやコンゴやモロッコや、ブラジルやアルゼンチンやチリやボリビアもゼレンスキー大統領が触れた「世界」の一員ですが、これらの国の議会がゼレンスキー大統領の演説を認めたでしょうか。

ロシアに対する非難は国連でやればよいのであって、なにもわざわざ国会でオンライン演説を行わせ、日本が戦争の当事者になる必要はないはずです。

なぜわざわざNATOの戦争に首を突っ込んで当事者になり、NATO加盟国と一緒になってNATO外交の失敗の尻拭いをしなければならないのでしょう。

先の戦争で連合国に入れなかったコンプレックスがあるのか知りませんが、NATOに追随して戦争の当事者になる必要はありません。

日本は戦争の当事者になるのではなく、中立的な立場から平和構想の提示や紛争解決のための提言を積極的に行うことで、世界平和の実現に貢献すればよいのです。それが憲法が要請する国際協調主義に立脚した積極的な平和外交というものではないでしょうか。

ロイターの報道によれば、南アフリカのラマポーザ大統領は「他国のような大きな影響力を持っているふりをすることは望んでいない」と述べたそうですが、日本がNATOとつるんで「大きな影響力を持っているふり」をして戦争に巻き込まれるのは我々国民です。

ラマポーザ氏は「他国のような大きな影響力を持っているふりをすることは望んでいない」としつつも、調停するよう打診があったとし、「われわれのできる役割を果たす」と述べた。

https://jp.reuters.com/article/ukraine-crisis-safrica-idJPKCN2LE222

その危険を認識しているのか、日本の国会議員にはその点をよく考えて欲しいと思うのです。